アメリカ 写真【小池清通】

コロラドプラトー 【小池 清通】 - 朝日を浴びるユタ州アーチズ国立公園ノースウインドウから見たテューレットアーチ
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 人生の分岐点となった出来事

  
  - 本能的な目覚めを導いた事件


 なぜ砂漠写真を撮り始めたのか、という質問をされると応えられなくなるほど自然に砂漠地帯、そして砂丘という自然の造形に惹かれて、その生態系に身を委ねるようにして活動を続けています。なぜ砂漠なのか、ではなく、写真撮影を通して何かしらの役割を頂いた時の表現の形が砂漠だったのだろうと思えることが、現在の活動の支えになっており、また多くのファンの皆さんからの暖かい言葉が大きなエネルギーになっています。が、現在に至る写真家、写真作家としての活動を導いたものは、あの 「9.11同時多発テロ事件」による私の人生観の変化だったようです。

 私にとって2001年9月11日に引き起こされたあの事件は、今思えば起こるべくして起こった人間という生物の中での心理の爆発であり、また、ひょっとすると本能的にバランスを無意識にとろうとする人口過多になっている世界の中での心理的な反発調整本能が感情的なものとなって行動化されたものなのかもしれません。人類史を振り返ってみると、原始の時代や初期には、序列や初歩的なシステムはあっても、我々は必要に応じて最低限のものを求めて生活することによって種の保存を続けていました。自然を前にしては、人間が如何に無力であり、畏敬の念をもって与えられたものの中で生活を営むことが最善と思われていましたが、文明が発達して流通システムが確立され、食材供給においても季節外れのものが年中手に入り、他国でしか食べられなかったものが手頃に入手できるようになりました。自然の中においては、人間が如何に自己中心的であるかを思い知り戒められるるべき時代に入っていた21世紀の初めに、この事件が起こりました。それは人間だけの事件に留まらず、我々も一部となって動いている大生態系の中の人間という生物に起こった異変の一つだったかもしれません。そして、それは単に多くの犠牲者が出た悲劇だったという意味ではなく、「人間はどうあるべきか」という最も大切なことを忘れて大きく育った国への目覚めの一撃であったようにも思えたのです。

 私たちは自然(環境)の一部として存在しています。引き続き危機感を増す温暖化現象や攻撃医学に対抗するかのように次々と現われる抗生物質に屈しないウイルスの登場、食生活が豊になったと思える中で変化し続ける我々の体質、自己治癒能力の低下や免疫力の低下なども、自然の中に存在する私たちが直面している流です。文明を拡張する技術改革やその普及が多くの人を救っているのも確かですが、それらによって最も大切なものを見失ったり、忘れたりしている人は決して少なくありません。

 私はこの同時多発テロ事件後、本格的に精魂を注いだ撮影、写真作家としての活動を始めました。新たな活動の拠点というよりも新たなる出発の基礎作り・再認識の場として私を引き寄せたものはパンフレットや写真集に載るような華やかなグランドキャニオンでも摩天楼が美しい大都市ニューヨークでもない、北米大陸中西部コロラド州ロッキー山脈の麓に横たわる大砂丘そしてそれを司る砂漠地帯でした。そこで私は自然の一部として無心になれる瞬間を感じ、ここが私の再スタートポイントになると感じました。私は綺麗な写真を並べて、その場限りの関心を、高覧される人たちから得ようとは思いません。写真には人間の深いところと繋がる何かがあります。その何かとは、視覚的に捉えられる画像が含みうるパワーでありエネルギーであると思っています。故に写真展においても、写真集においても、深い意味を持つ芸術や小説がそうであるように、何度も何度も見てみたいと思えるような理屈では説明し得ないものをもった作品を世に送り出すことが、私を写真作家への道に導いたあの大イベントが意図し意味したことであるような気がしています。

 大自然の中にあっては人間も他の動植物と同じように命を与えられています。にもかかわらず人間は傲慢であると思えるほど自分勝手な価値観を持ち、それを維持するために他の命を軽視しています。自然界には、命の歯車が無限に連なる生態系があり、その生態系には、それぞれの命が存在を許された枠(域)があることを再認識しなければいけないと思います。そのような意識の元で自分の『位置』を不毛とも思える大砂丘の生態系に感じ見つけました思いがします。大自然の前には、私一人は無力ですが、そこに存在することを許されているという実感を砂漠での撮影活動の中から体感できることはとても幸せなことだと思っています。

 自然は全ての命の源です。そこに生きる人間に、あるべき姿を思い出させるには本能のレベルに訴えることが必要であり、そのレベルに強くつながりを持っているものが感性だと思います。私が写真に真剣に取り組もうと思った理由は、その感性のレベルに自然の様々な姿を、写真を通して訴えることができると信じたからでもあります。大自然と感性を接点にして本能と大地の繋がりを感じ、現代人が見失っている「もの」を私の作品を通して感じて頂けたら幸せです。

 大自然の声を聞き、少しでも多くの作品を世に出し、「命の源」を再認識する写真展を開き続けたいと思っています。

小池 清通


 

 
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写真作家 小池清通 コロラド事務所
「自然とつながる時」
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