先見 【小池清通】

 
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 英語に「Foresight」という言葉がある。「先見(の明)」などと訳されているが、アメリカで生活をしていて理解に苦しむことがいくつかある。その一つとして、クレジットカードを魔法のカードだと思って使っている人が多くいるということである。日米の金銭感覚、消費感覚、そしてそれに伴う支払い義務に対する責任感などの違いによるものもあるが、根本的には案外簡単な心理的なものが原因になっているかもしれない。
アメリカでは不況時だけでなく、個人破産をする人が多い。その中で、前述のようなクレジットカードの多用で支払いが間に合わなくなり、破産申告をして逃げるパターンがある。払えないものを買うということが私には理解できないが、事実である。

 21世紀を迎え不景気が続くアメリカ経済も、イラクへの戦争を大統領が始めそうで不安がつのっており、その回復にも時間がかかるだろうといわれているが、数十年来の低金利が登場し家のローンが安くなったことで家を買ったり、買い換えたりする人が多い。そんな中で、やはりアメリカらしい傾向を聞いたのである。

 ある家庭のご主人が会社でプロモーションを受け給料も上がるという。家族揃って喜び、今住んでいる家を売りに出し、早速より大きな家を物色し始めたらしい。これは、実際によくある話なので、驚かないでもらいたいが、昇給を受けたといっても、通知をもらっただけで家の買い換えの行動を起こしているのである。もちろん、その行動が予想通りにサポートされて何の問題もなく過ごしている人もいるが、景気の停滞などで昇給の数ヶ月後に減給になったり、ひょっとすると首になることがある。当然のことながら、家の支払いはできなくなりクレジットカードの場合と同様に破産申告に至ったり、損失を覚悟で買ったばかりの家を売り払うはめになるのである。

 国民性なのかも知れないが、手に金が入るとすぐ使おうとする傾向がアメリカにはある。統計で見ても貯蓄率が大変少ない。だから、現在のような不況に見まわれると、走り回り、何かありそうならば平気で泥丸毛になって穴を掘るような心理状況の人が多い。一方、不況が続く日本ではあるが、大なり小なり誰でも貯蓄をもっているから、騒いでいるほど個人レベルで危機感を持っている人は比較的に少ない。この危機感がないというのは別の意味で問題なのだが、そのことに関して言及することはここでは控える。

 どちらがいいのかは別として、そんな先見を持って生きる民族と現在を生きる民族の違いを見た思いであった。狩猟民族は獲物を獲って生活するから、獲物がいなければ、場所を変えて狩猟をしてきた。獲った獲物はその場で食べ、次の獲物を追ってきた。一方、農耕民族は四季の移り変わりと暮らし、草花の芽生えから枯れるまでを生活の中で受け入れてきた。いつ実がなるかを知っており、またいつが旬かもしっている。厳しい冬の間を生き延びるために貯蔵術を生み出し、漬物や佃煮などを作り出した。収穫があると次の収穫までその蓄えがもつように貯蔵して生きてきたのである。

 「先見」つまり計画性、プラニングにかけては日本人は長けているはずなのである。

 

 
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