銃社会 【小池清通】

 
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 エッセイ:  おもちゃの銃

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 ある中学校で一年生がプラスチック製のおもちゃの銃を隠して持ちこんだことがある。色は蛍光色のオレンジと黄色で銃の形こそしているがどう考えても本物には見えない。実際の拳銃よりも子供の手に合わせて小型にできており、実際にパレットと呼ばれる弾(直径3ミリ前後)を撃つことができるが、射程距離はきわめて短い。

 私も幼い頃に、銀玉鉄砲などというものがあった。よく友達と撃ち合いごっごなどをして遊んだ。玉に当たることはあったが、常に気を張って遊んでいたから怪我をするようなことはなく本能的に遊びに徹していたのであろう相手を傷つける意図は皆無であった。

 確かに眼などに至近距離から玉が当たれば視力に問題を生じていたかもしれないが、子供というのは遊びを通して物事の危険性を覚えるのも確かである。裸足であるくことによって地面を感じ、その表面の凹凸などを察して感性を養ってきたのである。ガラスや釘を踏んで足を切ったりしたことはしょっちゅうあったし、だからといって裸足を禁止する風潮はなかったのである。

 彼はこのおもちゃの鉄砲を学校に持っていって休み時間に的を見つけて撃っていた。もちろん人に危害を加えるつもりは全くない。仲のいい友達がやってきて騒ぎ出す。いっしょに撃ち合いシーンを演じて楽しんでいた。

 このことが学生部長の耳に入り、彼は即刻捕らえられて学校に拘束されたのである。父兄が呼び出され、公聴会にて処罰が決まるまでの10日間の謹慎を言い渡された。学校中で大騒ぎにさえなったこの事件は、おもちゃの鉄砲にある。

 確かに至近距離で意図的に人の顔を撃てば、目に入って怪我をさせる可能性はあるが、それ以上のパワーはない。しかしながら、コロラドでは数年前に高等学校で実弾を乱射して13人が命を落とした事件があった。コロンバイン高校の銃乱射事件である。それ以前は、銃の屋内射撃場でもレンタル銃を借りてシューティングを楽しむ人もいたが、ガンのレンタルが一切なくなり登録している自分の銃を持ちこむ人に限りシューティングができるようになった。それは、このコロンバイン事件で身内を亡くしノイローゼ-になっていたある母親が、その射撃場でレンタル銃で自殺を図ったからであった。

 その後、この銃の国でも銃所有だけに関してでなく、銃そのものの存在に異常な神経を使ってきていたのである。私からすれば馬鹿らしいとも思える異常ぶりであり被害妄想に他ならない。現在も銃の所有が合法的に認められ、また違法で銃が手に入るだけの量が出回っている上にその生産は更に続けられているのである。そんな点で、何のかんのと銃の登録や登録申請者のバックグランドチェックが設定されても、問題の解決をしようとしているようで、大きく踏ん張って揺るがない根本的な理由に気づいていないかのように思えるのである。

 学校では武器やその形をしたおもちゃの持ちこみを厳禁していた。彼は公聴会(ヒヤリング)という大袈裟な裁判所に似たような学校の法廷に両親と共に引き出され、判決を下されることになった。

 人を傷つける武器。物質的なものに神経を尖らせる前に、精神的な常識感覚や他を労わる感覚を養う方が大切なのではないだろうか。美術の時間に使うカッターナイフやハサミの方がよほど殺傷能力が高いと私は思うのである。

 

 
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