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「砂丘のコーヒーカップ」を贈って下さったMさんと、帰国中に東京で会うことができた。彼女のオフィスは赤坂の米国大使館の近くである。いつ東京に行ってもお上りさんである私は、どうやってその近くまで行ったらいいか分からないので、細かく伺ってから地下鉄に乗った。
彼女の写真はOさんに見せて戴いていたので分かっていたが、彼女には私の風体に関する情報が皆無であった。それでは不公平だと思った私は、その日の服装を知らせた。「では、御指定の改札口の外で立ってます。目立ちますからすぐ分かると思いますが、黒の皮ジャンにロッキーズ(コロラドロッキーズ:野球チーム)の帽子を被っています」
指定の時間前に到着し、改札口付近で彼女を待った。地下鉄を利用する人が出たり入ったり、休むことなしに動き回っている。そんな流れの中で、私は一人野球帽を被って突っ立っていた。ふと見渡すと、皆背広やフォーマルなオフィスウエアーを着ていることに気づいた。どうも私の風体が不似合いなところかもしれないが知ったことではない。そんな自分を面白く思いながら待った。
昼食時間を割いて足を運んでくださったMさんと会い、近くのホテルのレストランに向かった。私は昔から大きく幅をとって歩く癖がある。決して足が長いわけではないが、歩くスタイルからそうなってしまっている。彼女に御無礼をしてはいけないと、速度を気にしながら歩いた。
ホテルに入る前に彼女が何気なく一言いった。「想像していた方と違っていたんで…」えっと思いつつも、ホテルのドアが近づいてきたので、どのように想像されていたのかまでは聞かなかったが、係員に案内されるままレストランの席についた。
砂丘のコーヒーカップに対してのお礼を申し上げ、談話に花が咲いた。そしてあっという間に時間が来てしまい、名残惜しいまま私は東京駅に向かった。
コロラドに戻り、しばらくしてからOさんと会う機会があった。Oさんは、私がMさんと会った後に、彼女ともメールなどで話をしていたようであったが、あるレセプションで何人かの人と話をしている彼の脇を通ろうとした私の右腕を突然つかみ楽しそうにいった。
「そうそう、この人がそうなんですよ。ロッキーズの皮ジャンに帽子を被ってオフィス街の地下鉄駅に立っていたら目立ちますよねえ」何の話をしていたのか分からなかったが、握った腕を放さずにぎゅっと握って、Oさんは御機嫌であった。話を聞いてみると、日本にいたらそんな格好で人と会わないだろうなあ、というような話だったらしい。
確かに中年面の男が平日若い女性と会うのに東京のオフィス街で、野球帽に皮ジャン、ジーンズにウエスタンブーツは日本では珍しい珍種の猿のような扱いをされる対照物になってもおかしくないのかもしれない。しかし、その格好で私は一週間東京で人と会っていたのである。何かこの服装から氣でもでていたのだろうか。
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