お茶 【小池清通】

 
写真家【小池清通】
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 エッセイ(1): お茶

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    エッセイ(1)
        二日半4500キロ
        この指とまれ
        砂丘のコーヒーカップ
        ブロードモアホテル
        男四十にして
        青春
        お茶
        美人
        個性
        ある事故
        服から出ていた気


 冬にしては温かいある日、日頃から懇意にして下さっているFさんが私のオフィスに寄って下さった。いいご家庭の出なのだろう、どこか品がある方で、突然ひょうきんな漫才風のお喋りを始めるパワーがありながら、優雅さが常に溢れ出ている。頭の回転がかなり速い方で、ちょっと油断していると話題についていけなくなる。見るからに尋常な方ではない。

 そんな彼女が何気ない体をもって、「いつもお世話になっておりますので」と突然袋から茶碗やら何やらと出し始めたのである。そして、あっという間に茶道の御膳がオフィスの片隅の本棚あたりからコピーマシンに至る領域に出来あがっていた。まるで一つの別世界を創り出してしまったような錯覚を持ってしまう。言葉で表せないような空間がそこに出来上がっていた。私に才能があれば、舌べろに墨一杯の筆を押し付けながら宙を仰ぎ、俳句でも作って庵の柱に掛けおくくらいの風情があるのだろうが、迷惑をかけるのが関の山なのを自覚しているので黙って感嘆していた。

 このような光景はさすがに会社始まって以来の一大事である。これは凄いとビデオでも回しておきたいくらいの光景が展開された。無意識のうちに「ビデオは、ビデオは」と叫び走り回る私を見て、照れながらも彼女の作業が進められていった。Fさんは慣れた手つきでお湯を茶碗に注ぎ、これまた慣れた手つきでシャコシャコシャコッとお茶の粉をかき混ぜた。あわ立ちながら濃緑の色と何とも言えないいい香りがオフィスの中を舞うようにして漂っていった。お茶の香りはいつ嗅いでもいいものである。

 ふと横をみると会社のスタッフの真理ちゃんが小ぶりの缶に入ったお茶の粉に鼻を近づけて匂いを嗅いでいた。その素振りを見て何を思ったのか、私は、彼女がコカイン(コケイン)かなにかをストローですする光景と勘違いして一瞬うろたえてしまった。なんともはや、私のアメリカ生活もついにこういう連想を自然にするにまで至ってしまったようである。恐ろしいものである。

 

 
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小池清通
写真を通して感性を磨き
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