実話 【小池清通】

 
写真家【小池清通】
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 エッセイ(3): 自殺

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     エッセイ(3)
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 自殺に関して私なりの主観で書いたものを「麦わらシリーズ」の中に幾つか載せさせてもらっている。私は中学校時代に友人の自殺による死を経験して、それを卑怯な行為と理解してきた。その当時の私にはかなりのショックだったのである。
歳月が経つにつれ、息子が高校生になる年になり、また違った人生観を持ちながら、2000年の11月に中学校の同窓会に出た。

 同窓会そのものは楽しく過ごさせて頂いたのだが、同席していたMからこんな話を聞いた。Mとは幼稚園から高校まで一緒の仲で、この同窓会の数年前に開かれた高校の学年同窓会でも同席している。その高校時代の同級生の話であった。

 テーブルから剃りあがるようにして巨体を私に摺り寄せてきたMは、「おい、Tが死んだの知っているか。」いきなり何を言い出すかと驚いた私に、彼は付け加えた。「あいつ、自殺したぞ。」

 なんだ、と仰天する私に話す合間も与えずMは言った。「ひどいことするな、あいつ。」何のことだか分からないので無理やりMの会話を立ち切ってどういうことかを聞いてみた。

 Tとは高校の同級生であり、この数年前に同窓会で話をし、アウトドア関係の会社をやっていたと聞く。その業界では結構名も売れて雑誌にも出ていると胸をはっていたのを覚えている。しかし不景気の波にのまれて彼の経営するその会社も傾き、悩み悩んで首を吊ったらしい。しかも、自宅でやったらしい。その死は、無惨にも彼の妻と幼い子供によって発見されたという。Mは、霊前で吠えたという。「馬鹿野郎、奥さんや子供の前に見難い死に様をさらしゃがって。」

 Mの気持ちは良く分かる。自殺というものを極端に卑下し軽蔑してきた私には、Mの感情の高まりが良く分かったのだが、彼が自殺という行為に及んだ経緯は彼以外に誰も知らない。そんなことを考えてみると、自殺という行為を卑下しても、それに至る精神的なプロセスなどは実際にその場にいた人でなければ分からないと強く思うようになった。

 自殺をしようと思ったことがない私にはTの精神状態を深く理解することはできない。それでも、私は人生とは御先祖様から貸して頂いている時間だとも考えているので、 その時間を勝手に立ち切ったTの行為に対する抵抗は消えることはない。

 
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