エッセイ 【小池清通】

 
写真家【小池清通】
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 エッセイ(3): ニューヨーク

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     エッセイ(3)
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        精神治療医
        70マイルでチュッ
        テロ事件
        自殺
        リハビリ
        おとぼけ

 ニューヨークというと、ニューヨーク州のマンハッタン島にあるニューヨークシティー(以下、NYC)の代名詞として使う場合が多い。実際には、州の名前であるから正確な呼び名ではないが、それだけでもどこのことを言っているか分かるほどに固定名詞化している個性のある街である。

    New York, to the tall skyline I come

    Flying in from London to your door

    New York, looking down on the Central Park
    Where they say, you should not wander after dark.

 誰のオリジナルか知らないが、サイモンとガーファンクルのセントラルパークコンサートでも歌われた歌の出足である。 NYCを初めて訪れる人が飛行機からセントラルパークを見下ろしている情景が目に浮かぶ。夜は危険だというこの公園は、 NYCの一つのシンボルでもある。 NYCは数年前に友人のところを訪れたきり久しぶりの訪問であった。前回は、冬のひどい寒さの中を歩いて、国連ビルの近くの友人宅に寄ったのを覚えている。サスのへたったイエローキャブを運転する中東系の運転手が、やたらと舌を巻きながら話す英語が聞き取れ難く難渋した思い出がある。コーナーでバウンスする車内でよく喋れるなあと思えるほどの重力と遠心力を体験できるキャブライドであった。

 今回は、業務視察を兼ねた出張で、まず、メリーランド州のボルティモアに入った。丁度この出張の後の4月4日に、以前通訳をさせて戴き面識のある、野茂選手が大リーグ2度目のノーヒットを記録したボルティモア・オリオルズのスタジアムのすぐ近くのホテルに泊まった。2泊の後に NYCに向かう予定だった飛行機が、大雨のために欠航になった代りにアムトラックに乗って2時間半かけて入った。冷たい雨の降る中、NYCのペンステーションに到着し、広い構内を抜けて7番通りに出た。空は暗く、風が冷たい雨を横向きに押し付けながら吹いている。

 いつもなら、手を上げればすぐに拾えるイエローキャブもこの日ばかりは大繁盛で、なかなか拾えない。長く連なるタクシー待ちの列に加わり、足もとの排気口から吹き上がる突風のような風にマリリン・モンローのあのスカートを押さえる写真を思い出したが、前にいた女性はノーマ・ジーンどころか、小錦を彷彿とさせるような巨漢で、風が気まぐれな悪戯などをしてこちらに倒れたりしたら、私は圧死する可能性もあるのではないかという恐怖さえ覚えていた。彼女を支えられる自信が私にはなかった。しかし、何事もなく、彼女も柔らかく体を包む体脂肪を押しつけるようにして、ショックアブソーバーがボトミングしないのではと思えるほど沈む車体の中に消えていった。

 そこから、45番通りのマリオットホテルまで飛ばし、取りあえずチェックインを済ませてから、マンハッタンの街を歩いた。雨が降ったり止んだりする中、視察をしていると、あのエンパイヤー・ステイト・ビルディング、そしてワールドトレードセンターが見えてきた。丁度、メイシーズという大型デパートの角からよく見えるのだが、最上階のあたりは雲に包まれて見えなくなっているほどであった。オーバーキャストの天候である。

 仕事を終えて、お世話になっている会社の社長さんが、是非寄ってくれとお誘いをかけてくださった。メディア関係の仕事をされている実力派の女性社長である。私は同行人のお許しを得て、その夕方は、彼女のオフィスに足を運んだ。以前は「キャッツ」を彼女のビルの一階で公演していたらしいが、今は違うミュージカルが公演されているらしく「キャッツ」をやっていた頃は、事務所の場所を教えるのが楽だったと言っていた。 とても気さくな方で、かなり忙しいスケジュールの中、笑顔を絶やさず飾り事もない自然体で私に接してくださったのが印象的であった。そして、彼女の言葉やその抑揚からNYCという街のエネルギーのようなものを感じた。 NYCの街の活気を肌で感じたのははじめてではないが、今回は、悪天候の中ではあったが、この大都市の息吹のようなものを感じさせられた。

 私は、自然が好きで山に登ったり、砂漠地帯を走り写真撮影などをしているが、そんな自然のエネルギーとかパワーとは違った、この街そのものがあたかも生き物であるかのように出している「氣」のような躍動感のあるパワーを感じていた。 大都会であるゆえに犯罪は多く、人は冷たいとは言われていたが、ビジネス的なポテンシャル云々という人間の経済観念的なレベルではなく、NYCには奥の深い魅力があるような気がした。

    New York, 摩天楼が見える

    欲望を満たす街

    New York, 古い映画の一シーンのように

    誰もがエネルギッシュに見える街

 アメリカという国の中だけでも、こんなに文化的な違いがあるのだと認識させられてしまう。郷里の同じJさんと夜のブロードウエイ通りを歩いた。小雨が降り注ぐ中セントラルパークの南西の角を横切り歩きながら、街の鼓動を体一杯に感じていた。そんなパワーのある街、ニューヨーク。何かを教えられたような気がした。

(この文章は同時多発テロ事件の起こる約半年前にNYCを訪れた時のもの)

 
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