笑い話 【小池清通】

 
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 エッセイ(3): 空港のトイレ

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     エッセイ(3)
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 1995年2月28日に開港してから、今年で7年目になるデンバー国際空港は、巨大である。開港当時から5本の滑走路を持っており、成田空港関係者などが視察に来られた時は、半分涙顔で怒ってしまうほどのスケールである。そして、現在は6本目の滑走路を建設中というマンモス空港なのである。

 初夏のある日にVIPのお客さんを見送りするために空港に来ていた私は、空いた時間を利用してトイレに向かった。その日の朝は慌しく、季節柄かあちこちで掘り起こしては埋め、埋めては掘り起こすような勢いで道路工事が行われていた。道路を走っていると、工事関係の看板やオレンジポールがあちこちにあたかも障害物競走のアトランダムな設定をしているかのように立ちはだかっていた。前方ばかりか、サインを見落とすドライバーに気を使いながら空港に来ていた。長距離トラックの黒煙が、青空に混じり飛んで消えていく光景がまだ脳裏に残影となって浮かんでいた。

 「ハ〜」と人生の最大の喜びを得たかのように快楽、そして開放感に浸って座り込んでいた私の数部屋〈部屋という表現の方がプライベートな空間を作っているようで響きがいい〉隣りで、野球の7回の裏にかかる「Take Me Out To The Ball Game」が高らかに鳴り響いた。その音はタイル貼りのトイレ内に響き渡り、その音楽が消えて静寂が戻った瞬間に受信者が会話を始めた。アメリカ人は声が力強いから、今度は彼の声が響き渡っていた。周りは彼の電話の交信に配慮をするかのように静寂があった。

 「もしもし、ダグですが」

 ほんの少しの沈黙の後に「今ちょっと取り込み中だから、5分くらいしたらかけ直してくれ」という声がして会話が終わったようであった。大きな奴と取り組んでいるとは電話の相手は分からないが、私にはしっかりと分かっていた。そんな会話の後に、待ってましたとでもいうように個性豊かな放屁音が鳴り響き、快音と共に爆撃部隊が総攻撃をかけたような破水音が聞こえていた。トイレは通常の音声に守られて人々の快楽を誘っていたかのようである。

 

 
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