アメリカ実情 【小池清通】

 
写真家【小池清通】
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 エッセイ:  テロ防止対策の実態 (1)                     12/25/06

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        テロ防止対策の実態 (1)

 12月半ばにボランティアの内容を含めた出張があり、生まれて始めてハワイに行ってきた。コロラドは氷点下20℃まで落ちている冬の気候であるが、それとは正反対の熱帯性気候の地で100%あるのではないかと思われる湿度と30℃前後の温度が冬季型新陳代謝になっている私の身体を出迎えてくれた。

 最初に寄ったオワフ島のホノルルは、アメリカとは思えないほど日本人が多く、日本語の看板や呼び込みも目に付き耳に入ってきた。

 知的障害者の雇用を促進すべく作られ運営されているヘルマノ農園に寄った後、ホノルルに戻る途中に足を伸ばして真珠湾に行くことになった。主催者が世界の平和を祈るために立ち寄って来ようか、と提案したのが理由である。目に刺さるような緑があちこちにある。真珠湾に日本が奇襲攻撃をかけた際に多くの兵士が亡くなったといわれる戦艦アリゾナを記念するアリゾナ・メモリアル館の前で車を停め、50メートルほど歩くと入り口前の位置にいける。そこには体格のいいアフリカ系アメリカ人らしい兵隊風の男が腰を前に出すようにしてふんずりかえって椅子に座っていた。サングラスをとることもなく、私たちが近づくのを気にする様子もなかったが、前を通過しようとした瞬間に叫びだした。

 「ウエストバッグ、パウチ、小物入れ、ハンドバッグ、袋などの持ち込みは米国テロ防止条例によって禁止されている。」

 中身を確かめればすむことである。知的障害者の数人は外見でチャレンジを強いられていることは一目瞭然で分るし、観光客がどれほど怪しく見えたのだろう。ただただ驚いた。荷物検査もすることなく(する能力がなく)入館を拒絶されたため私が皆の「小荷物」を預かって外で待つことによって他の皆は入れてもらえた。

 テロ事件から5年ほどになる。中東を侵略し続けているブッシュ政権下で汚点を広める現米国外交。テロを恐れる被害妄想は、自分が最強であると自惚れて世界を君臨してきたつもりの米国がその鼻っ柱をへし折られた911から本性を表し大きくなってきているのは確かである。しかし、知的障害者のグループが、爆発物など入れようもないような小さな入れ物を持ってきて何を恐れるのであろう。内容物が心配ならば中を確かめれば済むことであるし、そのプロセスは空港などを何度も使って慣れている。それよりも、テロ攻撃と言うものは政治的な反応を期待するという意味合いにおいてアメリカのシンボル的なマンハッタンにあった貿易センターや国防省ビル(ペンタゴン)を攻撃しているが、真珠湾攻撃で撃沈されたアリゾナの記念館を攻撃することに意味を持つとは考えられない。なぜならアリゾナはアメリカのシンボルではなく、アメリカが攻撃された一つのシンボルであり、近年で言えば貿易センタービル跡地に作られたメモリアルと同様であるから、そこを再度攻撃してもテロ的な意味があるとは思えない。

 心理的な分析をするなら興味深いかもしれないが、テロ警報の色が変わったといってセキュリティーを強化したり緩めたりするよりも、米国に住む人たちの自己意識の再認識と生活の安全を改善する国内政策にもっと税金を使う方が、より効果的なテロ対策になると思う人は少なくないだろう。現に米国内での麻薬中毒、銃砲機問題、子どもの妊娠問題、エイズ、アルコール中毒、飲酒運転、殺人、窃盗、汚職、詐欺、虐待、精神異常、などの多くの問題は911以前も以降も改善されているとは思われない。ただただ心あるアメリカ人が心無い連中のやることによって仲間であるかのように同一に見られることだけが悲しい。

 
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