アメリカ実情 【小池清通】

 
写真家【小池清通】
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 エッセイ:  愛国心

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 2001年秋の同時多発テロ事件から約3年になろうとしている今(2004年7月末)ギリシャで開かれるオリンピックにアメリカ中が注目している雰囲気がテレビで放送されている。実際にはお祭り気分はなく今年11月に開かれる次期大統領選出の選挙に大きな期待と不安が隠され表れている。テロリストに対する不安や憎悪が誇張され増幅されて現在に至るアメリカ国民の愛国心という心理状況は多少違った捻りを加えて新化または退化しながら新しい形を作り出しているのがボストンで開かれた民主党大会と次期大統領候補公式選出会に見られる。

 テロ事件直後のアメリカ国民のショックと憎悪には計り知れないものがあるが、その事件を好機とみて武力による中東侵略を開始したブッシュ政権。時間が経つにつれ大統領の騒ぎわめき散らしていた大量殺戮兵器がイラクで見つからないまま1年以上経過し600人以上の米兵が命を落とし、それ以上のイラク人がアメリカ兵や自爆テロによって殺されている。愛国心というものは一体何なんだろうと考えさせられる。(フセイン大統領の独裁にピリオドが打たれたことはいいことだったかもしれないがイラク人がすべきことであって頼まれもしない米国が入っていたのには疑問が残る)

 アメリカ合衆国は自国(ハワイを除く)を侵略という意味において直接攻撃されたことがない。同時多発テロ事件は侵略ではないが精神的にダメージをも与えたという意味において、その攻撃という感覚でとるならば唯一のものかもしれない。現大統領が多発していた「悪魔の主軸」に「悪魔の武器(核兵器)」をもたせないことが正義である米国のする役割であるという言葉。そして「正義のため」に宣戦布告やアメリカ侵略をしてもいないイラクへ侵略をした彼の判断は全く理解できない。テロリストは国ではなく世界各地に点在する組織である。「悪の根源」が自分であるという認識はなく埋蔵量が世界2位であると言われるイラクの油田に欲が走ったのは彼の周りの取り巻き連中なのだろうか。彼の名指しにしている「悪の主軸」の一国である北朝鮮には「侵略」の兆しさえみせていなのは石油資源という実利的な魅力がないからであろうか。

 「華氏911」というドキュメンタリータッチの映画をみてきた。マイケル・モーア監督はブッシュ嫌いで有名でどこにでも出没して意見を論議する度胸・無神経さ・ビジネス精神がある。映画の内容の半分は同監督の主観による対ブッシュの憎悪として無視したとしよう。そんな特別バーゲン割引をしてみたとしても内容はひどいものであった。写っている人や起こった出来事は役者が演じているものではなく現実の出来事なのである。何度も登場している現大統領その人もこの映画のために演技をしているわけではない。モーア監督が記録破りの興行利益をイラクに寄付するかどうか、ブッシュ大統領が正当な理由と証拠を持ってこの実写フィルムに写されていることを弁明できるのか、またはすることがアメリカの将来に必要なことと思っているかどうかは分らない。しかし「愛国心」を利用し国民の憎悪や恐怖を利用して軍事行動を起こし正義ぶったブッシュは言明していた大量殺戮武器が1年以上経ってもみつからず、「世界の警官」米国軍がイラクの政権返還後も治安維持や新国家再建の補助さえもできないのはなぜなのか。毎日無実の一般イラク市民が命を落とし傷ついている。若い米兵が国のためだというプロパガンダを頭に詰められたまま言われたところに出向いて身に危険を感じれば自動小銃や大型砲を使って「悪党」がいると思われるところに打ち込む。

 同時多発テロ事件直後のアメリカ国内は「愛国心」の表示心理が増大し国旗の在庫がなくなるほどに売れた。家々の前には星条旗がかざされ、小さな国旗を車につけて走る車が嫌と言うほど目に付いた。しかし時が流れるにつれ国旗の数は減り、車につけっぱなしの小型国旗は汚れ破れて風にたなびくようになっていった。

 オリンピックを控えていつものUSAコールがあちこちで聞こえてくるが、今年はどうも違う響があるように思えた。それは、自国選手を応援するという意味においてではなく、自分たちがベストなんだと強制的に押し付けるような響であり、そうしないと自分たちの正当性を認められないという切羽詰った足掻きに似た心理反応にも思えるものである。アメリカ国民であるという事実が団結を生むと思うものもいる。仲間意識である。しかしその根底にある意識が歪んでいるもの確かかもしれない。外国からの投資や旅行・ビジネス客に頼るアメリカ経済の事実を無視するかのように「よそ者は敵」というような感覚が一部にみられている。市民権を持っていないものはよそ者というような感覚が芽をだしていることと、白人主権国家の基本的な本音である白人が偉いという感覚や言動が多少ながらみられてきているのは気のせいだろうか。

 アメリカはまだまだ世界のリーダーになれる潜在的な力を持っている。武力や経済力だけで世界を押し伏せるのではなく、アメリカは凄いなあと思わせるような行動を黙ってとっていくことを願う思いである。次期大統領が「悪の根源」続投となるか新玉ケリーが米国の間違った方向を修正するのか、アメリカ国民の愛国心の真意を見れる日が近づいているような気がしてならない。そして、自国唯一論を唱えることによって安全を確保したと思う心理の存在。また自分の庭に爆弾が落ちない限り侵略されている人たちの気持ちが分らないのは確かである。物に恵まれすぎて精神貧困が進む近代国家の中で一体これからのアメリカはどのような意味や位置を築いていくのだろうか注目されるところである。

 
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