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2002年夏は山火事で始まったような印象が強い。昨年のウインターシーズンから積雪が少なく、そのまま春になったけども雨が少なかった。6月に入っても相変わらず降雨量は例年のそれをかなり下回る始末。広い国土だから、こんな干ばつ状態の地域があっても東のミシシッピー川付近では、全く逆の状況で洪水があちこちで被害を出しているという現実。祭り好き連中がまたアルマゲドンだ親子丼だと騒ぎ出すのだろうか。
自然は偉大である。私はいつも思うのだが、自然(英語では 「Mother Nature」という。母なる、という敬意を意味するのだと思う。)の喜怒哀楽は激しい。それゆえに美しさもまた格別なのだが、一旦怒り出すと予期できないほどの恐怖をも招く。人間の非力さを実感させられると共に自然のパワーそして人間に対する戒めともとれる厳しい仕打ちを目の当たりにする。
「Coal Seam Fire」 と名づけられた山火事が、世界一大きい温泉プールで有名なグレンウッドスプリングス(コロラド州都デンバーより西に約250キロ)で出火した。その名の通り石炭層が火災を招いたものである。コロラド州には、古いものでは100年以上も前に発火して地下で燃え続け、くすぶり続けている石炭層が幾つかある。そのうちの一つが地表面まで熱を発して顔を出したらしいのである。折から乾燥警報がでている状況下であったから、地表面の枯草などにいとも簡単に発火したらしく、そこから広範囲に火の手が広がり同市の裏山まで火柱が立ち上った。
グレンウッドスプリングスでは7年ほど前に、同市裏の「King Mountain Fire」
と呼ばれる歴史に残る悲劇的な山火事があったばかり。予期せぬ風の変化で山岳消防士14人が火の手に囲まれて焼死したという惨事であった。そのほぼ同位置に火の手が広がっていたのである。火はハイウエイ(インターステート70号:I-70)を飛び越えて南側にも広がった。主要道路であるI-70も閉鎖に及び行楽シーズンの移動客もどうしようもない状態になった。
もう15年近く前に北隣のワイオミング州北西部のイエローストーン国立公園(1872年設立
- ユリシス・グラント大統領 - の世界最初の国立公園)で落雷が原因で山火事が発生し手がつけられない状態が続いた大火事であった。火事の後に芽を出した樹木たちが大きく育っている現在でも、当時の焼けた大木が放置されている。交通や観光客に危険がおよぶ可能性のある枯れ木だけは切り倒されているが、他は自然のサイクルに逆らわないように、という懸命な計らいからなのである。
山火事が起こるとそれまでに蓄積された枯れ木や枯葉が焼けて灰になる。灰は土に戻り新しく芽を出す植物の栄養分となる。カリフォルニアのヨセミテ公園で起こった火事の後には、歴史的にみて前回の大火事の時以来芽を出していなかった樹木の発芽が見られたという。樹木は数百年に一度起こる山火事の時にも、その後の子孫繁栄のために焼けて初めて発芽する仕組みの種をちりばめているのである。
山林のサイクルを専門的にみるならば、200〜300年ごとに山火事があるといいらしい。大きくなった樹木が焼ける、というよりも前述のような朽ちた枯れ木や蓄積された枯葉が焼けて土に戻るからと言われる。そして、新しい樹木が山に息吹を再び与える。もとの森林のボリュームに戻るには80年前後はかかると言われている。
自然の中に生きる植物たち。自然のサイクルの中で焼かれ、そして、必ず再生して新しい世代に息吹を与えられる。人間の寿命のスパンではないが、自然の中に生きる一生物として学ぶものがあるのではないだろうか。
そんなことを考えているところにまた新しい山火事が発生した。6月8日「Hayman
Park Fire」と名づけられた大火災が、デンバー南西部100キロの辺りから出火した。煙はデンバー首都圏を隠すように流れてきた。きな臭い匂いが街をおおい灰が舞った。折りからの乾燥した干ばつ性の気候と風の影響で火の手は大きくその範囲を広げ13万エーカーを越える州史上最大の山火事となってしまった。乾燥した今年の天候から野外での火気使用は厳禁となっていたにもかかわらずこの火事は人為的に出火したものと判明し犯人捜索が始まっていた。
6月15日。犯人が逮捕された。犯人はなんと森林警備隊の職員であった。別れた旦那さんからの手紙を悔し紛れに火気厳禁となっていたキャンプ上で焼き、その火の始末をせずにおいたらしいのである。
自然は偉大である。森林のサイクルは人間のサイクルよりも長い。雷が出火原因となる山火事が多いという。投げタバコや考えられない火気使用による出火を自然は望んでいるのであろうか。それとも、人間が自然の領域に無意識に食い込もうとしているとも考えられるが、それは苦しい理屈付けのような気もする。
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