自然 環境 【小池清通】

 
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 エッセイ: アライグマ

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 「アライグマのラスカル」なんていう物語のキャラクターがあったと記憶している。愛らしいアライグマの物語であったと思うがかなり昔のことなのではっきりとは覚えていない。実際のアライグマをペットとして飼ったことはないが、可愛いしぐさで人気があるが大きく成長するにつれて凶暴性を持ち出すと聞いている。動物好きの私でも、そんな愛嬌一杯で実は強暴な野性味をもった、いや本当の野生のアライグマが我が家を訪問するとは思ってもいなかった。

 何かの折に書いたかもしれないが、我が家はアメリカの家にしてはユニークで芝生というものが全くない。ゼロスケープなどといえば格好がいいが、ようは木だけが庭を埋め尽くしている家である。ネイティブである松や杉の類が数十本も根を張って天に向かって伸びている。爽快で街中にいながら森林浴を楽しめるという利点はあるが、初夏は花粉が庭中を黄色くして舞い散るのでたまったものではない。ホースで水をかけて花粉をある程度落とさないと大変な目にあうこともあるが、樹木たちの恩恵はかなりある。

 野鳥や哺乳類でいうとアメリカリスとでもいうのであろうかが沢山ご近所にいる。このリスは正式には Eastern Fox Squirell (Sciurus niger) と呼ばれるもので、我が家を縄張りとする連中が「与太吉」「田吾作」「お玉」(勝手に名づけているがどいつがどいつか分からない)など最低3匹はいる。だから、屋根の上を早朝から走り回る光景や音には慣れていたが、ある夜玄関口の上の屋根裏でごそごそと音がしていたのである。音の感じからして、どう過小評価してもリスの大きさでないことは分かったが、何がいるのか検討もつかなかった。

 隣人のケンが、「アライグマがお宅の屋根裏に入っていくのを見たぞ〜」と白い胸毛を覗かせてフェンス越しに声をかけてきた。「アライグマ?」予想さえしていなかった私は仰天したのである。

 どこから入ったのだろうと見てみると、我が家の表と裏の屋根の間に平屋根があるのだが、家の脇に飛び出して雨どいがある軒から入ったらしい。平屋根は痛みが激しいとか聞いていたが、どうも雨漏りがしていたらしく水がアライグマの進入口となった軒のあたりにしっかりと入りこみ止め板を腐らせていたらしい。鋭い爪でばしっとその柔らかくなったところを掻き開いて中に入ってきたらしいのである。彼らはしっかりと我が家の隙をみていたのである。

 その頃は、春先のこと。子供を産む時期である。屋根裏で産まれては大変である。専門家を雇って罠をしかけてもらった。裏庭を外にでるとグリーンベルトという共有歩道があり小さな人工湖があるので、水の供給もしっかりしているという弁。高笑いをする野生動物捕獲スペシャリストの親父は目を輝かせていたが2,3日してもかからなかった。しかし4日目にお縄頂戴となったのである。お縄頂戴といってもアライグマに何の罪もない。自然を大切にと日頃から言っている私がこんなことを言うのは矛盾しているように聞こえるが、捕獲して食べたり殺したりしようとしたわけではないからご理解戴きたい。玄関の上から糞尿が天井から染み出したら大変だし、壁に穴を開けたりするらしいのである。もちろんこれは人間の勝手な言い分である。

 ともかく捕まったアライグマは、相変わらず高笑いをする捕獲人の手によって遠く山奥まで連れていかれ放たれた。デンバーという240万都市に住んでいてもこれだけ自然がまじかにある。自然はすばらしいが、人間がテリトリーを広げ過ぎているような気持ちを複雑な心境で整理して、大きく軒に開けられた穴にワイヤーをかました。

 スカンクの捕獲依頼もあるという。スカンクの場合は、狂犬病の類の病原菌を持つ場合が多いという理由で、捕獲されたものは法律によって殺さなければいけないということを聞いた。複雑な心境であったが、我が家にしばらく居座っていたアライグマちゃんは今どこで何をしているのだろう。

 

 
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