自然 環境 【小池清通】

 
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 エッセイ: お呪い

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 山岳部のあちこちにボランティアの人たちの手によって作られたトレール(山道)が横たわる。一体どのくらいの人数の人たちがどの位の日数をかけて作り上げたのだろう、どんな団結や決意、そして力強い信念とボランティア精神をもって完成まで死力を尽くして出来たのだろう。汗水を体一杯に出しながら、標高の高さから脱水気味の体を奮い立たせ息の上がる各々の士気を煽り合いながら、目を輝かせて周りの樹木たちのエネルギーを体一杯に浴びながら毎日鍬やシャベル、そして鋸や一輪車を動かしてトレールを作った人たちの姿が見えるような気がする。

 アメリカには、砂漠地帯やトレールが不充分な(ほぼ自然に近い状態のまま)場所には石を積み上げて、道に迷わないようにするシステムがあるようである。システムと呼ぶと大袈裟だが、これもボランティア精神の表れであり、ちょっとした自然の中の小道具として小石を拾っては、積み上げて道しるべにしていることが多い。そのお陰で道を間違えずに、そんなことに気づくこともなく、無事にハイキングやトレッキングを完了して充実した日々を過ごしている人も少なくないと思う。

 そういった気持ちを、私は強く持っているからトレールを歩くたびに感謝の気持ちを持っている。そして、道を作られたことに動揺や激情を表さずにトレールを歩く自然愛好家やアウトドアー愛好家などを暖かく包んでくれる森林と山たち。標高も3000b近くなると、流石に息が切れる。3450bの頂上に向かう山道のティンバーライン手前であったから3200bくらいの標高を越えた位のところで思わぬものに目が止まった。トレールは等高線に沿うようにして、上の等高線に向かって緩やかに上昇してはUターンしてまた同じ流れを繰り返し、徐々に標高を上げていく。

 あるUターン個所の内側にある大きな杉の木の幹に穴が開いていたのである。この穴は何らかの理由で自然に開いたものだと推測されたのだが、中に小石が詰められていたのである。明らかに人為的なものであり、一人の人間がやったこととは思えないものを感じた。何のお呪いか分からないが、この厳しい自然の中で力一杯生きている木に、このような儀式はないものだろう。トレールは間違える余地のないほど明確に山道として作られていた。一人の人間の好奇心や茶目っ気が、思わぬ群集心理を呼び1本の木を儀式の材料にしたかのように思え、心が痛んだ。

 
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