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 エッセイ: トレッキング

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 「トレッキング」という言葉は以前から聞いていたが、これといって気にしたことはなかった。学生時代にワンダーフォーゲル(ワンゲル)というクラブがあったのを思い出した。山に登って歩くクラブというイメージがあったから、登山部とは違うという程度の理解をしていた。そのワンゲルの人たちが楽しんでいたのが今でいうトレッキングだと聞いた。


 渡米してから、旅行関係の仕事をしてきて高年層の自然愛好家の人たちがトレッキングを楽しんでいると聞いた。英語で意味を調べてみると「trek」という動詞は、口語で「(徒歩で)行く」「旅行する」という意味がある。面白いのは「のろのろ進む」という意味もあるところで、先を競って歩くのではなく各々のペースで気楽にのんびりと歩くというようなニュアンスを感じることができる。(研究社新英和大辞典:第5版4刷1982年)

 私は昔からの癖で大股に歩くらしい。日本人体型だから、決して足が極端に長い訳ではないのだが、どっかどっかと歩幅をとり地面を蹴って歩くらしい。その裏付けをするかのように脹脛(ふくらはぎ)が普通の人よりも太い。それでも、ロッキーの山岳トレールを歩く時は標高が高くなると空気が薄くなり気圧が低くなるのとで、のん気に「どっかどっか」歩きは難しくなる。足場も平らなところはほとんどなく歩幅を大きくとって滑ったらコマネチをやることになる。ちなみに、私には股裂きの能力はない。

 息を切りながらも前に伸びている想像もつかない長さのトレールが森林地帯を右に左になだらかな斜線を引きながら等高線の上に上にと伸びている。私は、山が好きだといっても登山家でないからヘモグロビンの数は普通人並なのであろう。ティバーライン近くになるとかなり呼吸に堪える。脱水防止に飲む水も肌に感じない汗になって真っ青なコロラドの空に蒸発して消えて行く。標高2700bのトレールヘッドから頂上まで約700bの標高差がある。3450bの頂上から見下ろした辺りの景色は爽快なものがあったが、意図的か空気不足からか「のろのろ」と歩いた往復5時間ほどのトレッキングは心を洗われれ不思議なエネルギーを充電されたような素晴らしいものであった。

 これが山の魅力なのだろうな、と思いつつ既に次に上るトレールのことを考えている自分がおかしく、また幸せに思えた。


 
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