野生動物保護 【小池清通】

 
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 エッセイ: 野生動物保護

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 野生動物の保護は自然の保護と同時に大切な意味を持っている。アメリカでは Division of Wild Life という野生動物保護を使命とする機関がある。

 人間が自然を破壊したり、動物たちの生息地域に道路建設や宅地造成などによる不自然な傷を入れたりすることによって、生態系が変わることもありえる。また、人間の都合による狩猟や駆除によって天敵を失った野生動物が異常繁殖することも考えられる。

 コロラド州では、ビッグホーンシープ(Big Horn Sheep)- 大角羊が州の動物(State Animal)に指定されているが、それ以外にも個性の強い大型動物は多い。エルクと呼ばれる大鹿(Elk)、シロイワヤギ(Mountain Goat, Rocky Mountain Goat)などは樹木限界線を越えた山岳地域でも目撃できる。他小さなものでいうとチックモンクといわれるシマリスのような動物や、まるで岡ビーバーのようなマーモットも岩陰から顔を出しては様子をうかがってくる。

 北米一高い舗装道路の通っているマウントエバンス(Mount Evans)の頂上手前にサミットレークという氷河性の侵食によってできた湖がある。夏に上っても少し風が吹くと震えあがる寒さのところである。頂上まで行くと4300メートル近くの標高になり、雲の高さに目線が合うほどになる。

 そのサミットレークに脇にトラックを横付けして野生動物保護官が野生動物ビューポイントと看板をだして双眼鏡を三脚に設置し、遥か上の岩場で昼寝をしている大角羊の群れを紹介していた。仮設のテーブルには、大角羊の本物の毛皮、角などを展示し訪問客たちに野生動物、そして彼らの生息地域に関する情報を提供していたのである。確かに単純な仕事にも思えるが、実際の自然の中でこのようにして自然動物や環境に対する認識を深めさせ、また自然保護に対する自意識を刺激するサービスを提供しているところにアメリカの良さがあると思っている。

 ガードレールもない舗装道路を恐々と上ってくる観光客たちは肩をいからせるようにしてハンドルにしがみつき、気持ち崖と反対側に車を走らせてのろのろと走る。普通の人にとってはとんでもないようなこんな標高でも、自転車で登ってくる人たちがいる。歩くだけでも息の切れる標高なのである。そして、よく考えるとこの標高に道路を作るだけではなく舗装にする人たちがいるというのが驚きである。

 自然というものにやさしくしよう、と考えれば、車で上ってくるよりも自転車の方がいいが、私には体力的に無理があり、他のほとんどの人もそれは同調してくれるが、デンバーという中西部の大都市からほんの1時間半で上ってこれるという環境が素晴らしい。夏と冬の風雪などによる侵食のパワーは並大抵のものではなく、かなり頻繁に舗装道路の再舗装、補修工事が行われるが、そんな過酷な自然環境の中で生きている野生動物と簡単に接することができる機会が多いのは有難いことである。

 そんなことを思いながら頂上付近に向かうヘアピンカーブをいくつも抜けて上る道を進んで行くと、シロイワヤギたちが、そのごつごつとした岩肌に体を横たえて日向ぼっこをしていたのである。こちらに目を向けても何気にすることなくリラックスしていた。

 覆い被さるような真っ青な青空に白い雲があっという間に広がり始めていた。この日は雷雨の可能性も少なく薄い高層雲が空を包みこみ、それと同時に風までも連れてきていたようである。太陽の光は強い。そしてその熱も肌に刺さるほどに感じてはいたが、山岳部の天候である。風が吹き始めると寒さが肌に食い込んでくるし、気持ち薄かった空気がさらに薄くなったような錯覚さえしてしまう。

 自然を大切にする人間。そして、自然を傷つける人間。

 自然はどんな時でも私たちに生きることの厳しさ、そして素晴らしさを教えてくれる。野生動物の保護は、自然環境の保護につながる。国のやっていることの矛盾は感じるが、少なくとも自然を愛する人たちが動物保護官となって、少しでも多くの人に自然を教え、将来の子供たちにこの素晴らしさをそのまま残していこうと努力している姿がひしひしと感じられていた。


 

 
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