エコシステム 【小池清通】

 
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 エッセイ: エコシステム                            4.2006

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 自然というものは、天気や天候の変化、大地の変動などによってバランスを失った動植物を安定したものに導いてくれる。積雪で片方が折れた樹木は、徐々に傷ついた方に新しい枝を伸ばして均衡を試みる。樹木は栄養分に限度ができると必要な枝を優先して残し、なくても生きながらえると判断した枝への栄養供給を遮断し枯らす。土砂崩れで形状を変えた山岳側面はもろい土壌や岩を徐々に崩し落として安定した所に植物が根をはれるチャンスを与える。植物が根を張ると水分の蓄積や停滞時間が変化し、虫や動物が集まってくる。

 人為的な形状の変化というものがある。宅地開発、採土・採石や道路建設などの自然の形を変えてしまう傷がそれである。人が多く入れば入るほど地表に傷がついていく。それでも、自然は時間をかけて傷を癒そうとするが、そのスピードは人間の命のスパンと比較できるものではない。

 エコシステムという言葉があるが、自然が与えてくれた環境下で多くの動植物が生きている世界のことである。システムという言葉が使われているのは、それぞれの存在や生活のためにしていることが全てその一部として意味があり、それゆえに存在できているという「バランス」のみで存在している「アンバランス」な世界でもある。目に見えないようなバクテリアから、数百キロもある大鹿や熊までが、この世界の中で生きているのである。

 それは、どこを見渡しても大小の違いはあれ存在する、目立たないかもしれないが、全てのものの存在を支えている重大なものである。その最も身近なものは何だろうと考えたことがあるだろうか。

 エコシステム。私たちの最も身近にありながら、毎日の生活の中で忘れていたり、軽視しているものがある。それは、私たち自身の個々の身体なのである。身体の各所に存在し、臓器や皮膚、血液など様々な形や大きさで各々の役割をもってバランスを保っているアンバランスな世界である。一部の栄養分が不足すれば、必要最低限のものを守り、守れないものは枯らす。異物が入ってきたり、化学物質が入ってくると一部が塞き止められ循環機能に障害が起こる。

 新陳代謝。それは、私たちの身体の中でバランスをとるために常に動いているべき自然の与えてくれたエコシステムである。自己治癒能力。それは、アンバランスな状態を発見した時に自然が与えてくれた回復システムである。発汗、排尿、排便。それは、身体が必要としないものを外に出す大切なシステムである。

 心身共に健全な生活を送りたいと望む人は多いが、自分自身の健康というものをエコシステムとして理解して生活している人は多くはない。自然が与えてくれたバランスをとりながら、精神的なソフトな部分で前向きな生き方をすることが心身のバランスにつながると思う。身体と心のつながりは奥深く強い。どちらかが崩れると、一方がバランスをとろうと動き出す。

 最も身近な自然を周りの自然が見せてくれている。私たちが自然と接してそれを美しいと思ったり、その偉大さに感動するのは、単に美に対する感性があるからだけではなく、自然とは何なのかということを忘れさせないためにそのような感性を与えられているのだと理解すると、違った角度から見える当たり前ながら、普段見逃している景観が目の前に広がってくる。

 

 
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