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長い間旅行関係の仕事をさせてもらっていると常連客という方たちができる。何かにつけて信頼して連絡をして下さる方々である。
コロラド州は第二次大戦中に、イラクへのアメリカの攻撃が続く現在では特定の中東系の人を入れるかどうかなどという二度目の間違いを犯し兼ねない精神状態の人もでてきている最中、強制収容所があった経緯から日系人も多い。またクリントン政権下の予算削除で閉鎖されたりしているが、同戦後に基地や軍事関係機関が多かったことから兵役を終えた人が多く住んでいる。
50年以上も前の戦争であるから、その頃兵隊だった人たちもご年配になっておられるが、日本に頻繁に旅行されていたあるご夫婦がいる。奥さんが日本人で、ご主人がアメリカ人であった。仲のいいご夫婦であったが、亭主関白でご主人が電話はすべてしてきた。独特の口調とアクセントのある力強い音声のFさんは、奥さんが話したがっていると「My
Okamisan would like to talk to you.」と「女将さん」を回してくれた。
そんなご夫婦からしばらく連絡がなかったのだが、今年の2月頃だっただろうか、Fさんから電話を頂いた。4月に帰国したいというご希望だった。ところが、まだその時には4月1日以降の日本行きの割引料金が発表されていなかったので、「3月位にはわかりますからこちらから連絡します。」と伝えた。
そうこうしているうちに、世の中が慌しくなりイラク情勢も最終点に達し、分けの分からないプロセス?と国連の存在そのものに疑問を持たせるような状況のままアメリカがイラク侵略を始めてしまった。3月24日の午前中にFさんに電話を入れて、春の料金をお知らせしようと思った。ちょうど同じ時期のお客さんの料金発表やプロセスをしていたところであったので、タイミング的にはよかった。
電話を入れてみると女性が出た。私は自分を名乗ってFさんに代わってくれませんかとお願いした。その時、一瞬彼女の声が消えた。いや、そんな気がした。ほんの1,2秒だっただろうが、そんな空間が伝わってきたように思えた時に受話器越しに返事があった。
「Mr. F has passed away.」私の顎が床まで落ちた。高齢の方とは知っていたが、ショックであった。私は遺憾の意を表紙、故人の冥福を祈るべく言葉を選んでいた。すると彼女が付け加えるように言った。「実は、F婦人は最近事故に遭って骨折して入院しているんです。」私は言葉を失った。
どんな用件の電話なのか聞かれた私は、我に戻り「Fさんが4月に日本に行かれると電話を下さいましてね。その料金が出たのでお知らせしようと連絡したんです。」彼女は「そうですか。残念ですが、その必要はなくなりましたね。」と言った。
丁寧にお礼を言った私は、電話を切る前に聞いた。「失礼ですが、Fさんはいつ亡くなられたのですか?」彼女は言葉大人しげに言った。「彼は昨年の11月に亡くなったんですよ。」私が今年になってから電話を受け取ったことを伝えると「そんなはずはないでしょう」と簡単に言い返されてしまった。討論している状況ではなかったので、私はお礼を言って電話を切った。
私は体に少し力が入って、不思議な気持ちになった。鮮明に聞こえてくるFさんの声。あの電話の声は間違いなくFさんのものだったのである。
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