霊気 【小池清通】

 
写真家【小池清通】
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 エッセイ: 霊気での会話2

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 Cさんと会談をした。話をしたというよりも内容的に充実していたので会談と表現したがちょっと大袈裟かもしれない。ただ大袈裟でなかったのは、話の内容よりも話をしている時に起こったことの方である。

 正直なところ有意義な話をしたという満足感はあるが具体的に何を話したか、全てを覚えてはいない。ことの起こりは再会してから朝食を兼ねて近くにあったパン屋さん兼レストランのなんたらしゃんという名前の店に入った時から既に始まっていた。出来立てのパンを食べ放題。日本らしく可愛らしい2口サイズくらいのものがトレーに綺麗に並べられ、そこから選んでお気に入りを持ってこれる。そこで話をしながらパンを楽しんだ。

 ちょうど私たちが座ったテーブルの上は天窓のようになっており、直射日光を避けるために薄白いカーテンを吊るすようにしてあった。その布地を通して外の光が屋内に心地よい明るさを注いでいるのであるが、その光が動き出したように見えたのである。私から見てCさんの後ろの上にあたる位置だったから私からしか見えない。好奇心から何かが覗いているといった雰囲気の光であったと私は感じてはいたがこのことはCさんには言わずに食事を楽しんだ。

 場所を変えても話の勢いは弱まることなく、逆に強くなる一方であった。私は何気なく私から向かって左側にある席についていた。Cさんはもう一方の席につき2人で霊気の世界に入っていくかのような不思議な雰囲気の中話の流れに身を任せた。

 しばらくすると外の様子が変わり始めた。風がでてきたのである。目の角に見える側面の窓の外の木が揺れた。影が動くという感じで私の脳裏に映し出された。それは物理的に風で動いた木が光の加減で影となって視覚的に私の脳細胞を刺激したというものではなかった。気で見えたものの印象が強かったのである。

 次に入り口の辺りで人の動くような音がした。私は思わずそちらに顔を向けた。しかし、誰もいない。Cさんの顔つきが変わったことに気づいたのはこの時であった。こんな容貌の人だったろうか、と思わず自問していた私には、目前で話をするCさんが誰だか分からなかった。誰だろうこの人は。空に雲が流れてきたのだろう、光が動き始めた。影が私たちの顔を横切っては消えた。Cさんの前髪が垂れて額を半分ほど横切って中央部に来た。また違う容貌が私を見つめて違う話をし始めていた。太陽が顔を出し、柔らかな光が私の左目にあたった。Cさんの目つきが変わって私を見つめている。

 何が起こっているのか分からなかったが、恐怖感というものはなかった。入り口付近でまた人の歩くような音がして私はそちらをちらりと向いた。私の背後では人が動く気配が頻繁にあった。騒がしいほどの動きを感じていた。Cさんの後ろには大きな鏡があり、背中の一部が反射して私には見えていたのだが、その鏡の角から人が覗き込むのが見えた。そしてその鏡の横の飾り物の間に顔が数回浮かび上がった。

 外の木がまた激しく揺れた。空もあわただしくなってきたのか光が消えたり現れたり動きが激しくなっていた。Cさんはその後も表情を変え続け、あたかも多くの霊気がCさんを通して私に会話をしていたかのように容貌を変えていた。話に区切りがついた時に、思いきって私は言った。

 「なんだか騒がしいですね。何か来てるんでしょうね。」Cさんはその言葉を聞いて表情を緩めて言った。「すごいですね、今日は。沢山きていますねえ。外の様子も変だし。」やっぱり気づいていたようである。私は入り口の方でした音や気配、外の動き、私の背後のことを話した。そして、Cさんの表情が恐らく20回くらいは変わって他の人の顔になって話していたことを伝えた。

 ただぞぞっとしたのは私の背後にあった書棚の話になった時である。私はガラスの張られた戸のついた書棚に見えていたのだが実際には何もついていないものだったと言われたのである。確かにガラスの反射が見えていた私は、ついにそこを発つまで振り返ることができなかった。

 
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