Fujifilm TX-1 【小池キヨミチ】
小池清通 写真集 「大砂丘の声」 - コロラド州南部の大砂丘 砂漠撮影の一つの形として残すことが
できたのが、この写真集です。112ページからなるハードカバー
製本(ジャケット付)には93点の作品をまとめて写真集として紹介
していますが、その中の11点は、フジフィルム製TX−1で撮影し
編集したものです。このカメラは35ミリフィルム用でありながらも
中判用レンズを使用し35ミリに合わせて無駄なくパノラマ画像を
シャープに捉えることを可能にしています。
残念ながらTX−1に続くTX−2が発表されたかと思ったら生産が
中止となり現在では知る人ぞ知る名機としてマニアやプロ写真家に愛用されています。私がTX−1に
出会ったのは、写真展を開かせてもらった2007年のフジフォトサロンでのある話がきっかけでした。
現在愛用しているTX−1はある写真家の方の愛機でした。それを譲ってもらえたことが、この写真集を
ここまで大きく盛り上げてくれたパノラマ作品誕生の理由だったのです。昨年の出版後に仲介者として
話をして下さった方にオリジナルオーナーにお礼をしたいと伝えると、彼は既に他界していたことを知り
ショックを受けました。それと同時にこのTX−1が、どれだけの意味を持っているかを心の芯で感じた
思いがしました。彼には会ったこともなく、どのようなお人柄だったかさえ知らない私にとっては、形見と
する訳にもいかず、しかしながら、彼の思いが吹き込まれたカメラとして大切に砂漠に連れていけること
そして、LXたちと共に砂漠撮影、生態系の表情などを見てもらえることに喜びを感じています。
パノラマ作品というものの魅力は奥行きや広がりを視覚的な比率の広がり(通常フォーマットのそれと
比較して)を作品製作における感性の位置を変えることによって、違う次元で心をつなげることができる
ことです。また言い方を変えれば、パノラマの画格によって感性の表現をすることに長けている芸術家
にとっては、最善のツールになるものです。
私は昨年末辺りから、製造中止になったことで予備機の必要性を感じ探そうと動き出しました。仲間に 話をして、見つけたら教えてもらえるようにしていましたが、なかなかいいものは見つからず、または見つ
かっても破格の値段がついていて手がでませんでした。ところがつい最近になって、お世話になっている
あるカメラ屋さんの展示用として新品が一機、まるで使ってくれる人を待っていたかのようにして、みつ
かりました。これを偶然とするか必然とするかは人それぞれの見方によりますが、私には必然的なもの
としか考えられませんでした。この2台目のTX−1はいずれ兄貴分となる手元のTX−1と一緒になって
今後の私の撮影活動を共にしてくれることと思います。
(2009年4月11日)
■ 写真家と回る撮影ツアー
(米国中西部撮影ツアー)
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