エコライフ エッセイ 【小池清通】

コロラド 写真家 エッセイ【小池 清通】
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 自然の役割とは何だろう。そして、その中に生きる動植物のそれとは何なのだろう。

 樹木限界線(ティンバーライン)を越える高山のトレールを歩いているとアルパイン地帯と呼ばれるところがある。そこには、木が生えることができない環境がある。空気は確かに薄くなり気圧も変わってくるが、木が生えていないのはそれらが原因ではなく地中に根を張るだけの土の深さを確保できないためである。常に氷が浅いレベルに存在する環境にあるのである。根を深く張れず横に成長する這い松と呼ばれる松の生息の姿はそれを証明する一つの例である。その標高は地域によって異なるが、コロラドでは3200〜3300b位のレベル以上となる。

 樹木限界線に近づくと周りの森の木々の背丈が目に見えて低くなり、風雪に耐えて片側にだけ枝を出して踏ん張っているものも視界に入ってくる。その上に足を進めると足元の岩の間などにへばりつくようにして生えている高山植物たちが顔を出す。岩場の多いアルパイン地帯からエコシステムが始まっており、標高が下がるにつれてそれぞれの環境、気候に合った動植物が生息している。土壌によって針葉樹が多かったり、広葉樹が群生していたりする。そして、そのそれぞれが、各々の生活、成長の過程で他のものから恩恵を得ながらも何かを必ず返し与えているのである。

 春に新芽が顔を出し、花が咲き始めると虫たちが姿を現わす。そして、それらを捕食する小鳥たちが活動をはじめパートナーを見つけて巣を作る。小動物が活動を始めると、大型動物たちも活動を始め、草食・肉食獣たちもパートナーを見つけ食材豊かな夏に向けて次世代を残すために本能に導かれて動き始める。

 土壌の栄養が豊かでないところに咲く草は与えられた栄養を必死に吸収し、水分の少ない土地の植物は葉や成長の形そのものに工夫をして限られた水を少しでも多く吸収しようとする。草食獣はそれらを絶やすことない程度に捕食し糞を落とし土に栄養を返す。草や茂みが豊かに育つ地域では虫や小動物が繁殖しやくすなり、それらを狙う小鳥や猛禽類、肉食獣が動き回り獲物をしとめては食べ糞をして土に栄養を戻す。 水の豊かな所では、また違った植物圏ができ、エコシステムを形成している。また、砂地に生える植物は窒素を空気中から吸収して育ったり、カンガルーラットと呼ばれる小鼠は水を一切のまず植物の種子だけを食べて生息するという。

 厳しいと思える環境にも順応、適応して動植物は生息している。その中でお互いを絶やさぬように持ちつ持たれつの役割を持って生きていくことで、全てを包み込んでいる大自然のバランスを保っているのである。

 

 
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小池清通の自然美
The Great Mother Nature by Kiyomichi Koike
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